僕はファミコン世代です。
ゲームの箱や説明書には、かっこいい勇者が描かれている。でも、ゲームを始めると、テレビの中にいるのはカクカクした小さなキャラクター。その差は、今見るとずいぶん大きいですよね。
それでも、僕らにとっては間違いなく勇者でした。画面だけでは描き切れない部分を、自分の想像力で補っていたんだと思います。
2010年の年賀状は、そんな子どもの頃の感覚を、デザインの仕事につなげた一枚です。テーマは「想」。
きれいに見せる、その先にあるもの
年賀状には、こんなコピーを入れました。
「20年前、テレビゲームの中の勇者はカクカクしてたけど、僕らにとってそれは紛れもなく、勇者だった。」
ここでいう「20年前」は、2010年当時から振り返った言葉です。
ゲームの映像がどんどんきれいになる一方で、昔のカクカクした絵でも、僕らは十分に楽しめていた。見えているものだけでなく、そこから想像することにも面白さがあったんですよね。
デザイナーとして、見る人の想像力をかき立てるものをつくりたい。その気持ちを、最後の「見た目じゃない、無限の想像力で、冒険をデザインしたい。」という言葉に込めました。
カセットの代わりに、粘土でつくったBlookを
その考えを、写真の中でも表現しています。
ファミコンのカセット差込口に入っている、青い「Blook」の文字。これは僕が粘土でつくったものです。画面上で文字を載せるのではなく、実際に手を動かして、立体の文字にしました。
撮影した場所は実家。昭和らしい雰囲気の残る場所で、ファミコンと粘土のBlookを撮っています。
ゲーム機という見慣れたものに、自分の手でつくった文字を組み合わせる。コピーで伝えたいことを、言葉だけでなくビジュアルでも見せたかった一枚です。
写真とドット絵で、想像の入口をつくる
写真の中にいるドット絵のキャラクターは、Illustratorで制作しました。カクカクした絵と、粘土でつくった立体の文字。それを実家で撮った写真の中に組み合わせています。
コピーを考えること、文字を粘土でつくること、ドット絵をつくること、写真を撮ること。別々の作業ですが、伝えたいのは同じ「想像する楽しさ」です。
小さなドットの勇者が、僕らにはちゃんと勇者に見えていた。その体験を思い出しながら、見る人の頭の中にも何かが広がるようなデザインをつくりたい。2010年の「想」には、そんな気持ちを込めています。
ほかの年にも、そのときの興味や考えを年賀状にしています。







