年賀状には、好きなものを遠慮なく詰め込んできました。車、ゲーム、漫画、音楽。その年の干支や世の中の出来事と組み合わせて、いま何を伝えたいのかを考える。ブルックの年賀状は、そんなふうにつくっています。
お客様の仕事では、お客様のために考えて、つくります。その一方で、自分たちの年賀状は、ブルックがどんな人間で、何を面白いと思い、どんなことを大切にしているのかを知ってもらう機会でもあります。コンセプトも、キャッチコピーも、添える文章も、私自身で考えてきました。
ここでは、手元に残る2007年から2026年までの20年分を、当時の考えや制作の工夫とともに紹介します。絵の中の小さな仕掛けと、ことばとのつながりも楽しんでもらえたらうれしいです。
目次
- 2007|「勢」。好きな車に、進んでいく力を込めて。
- 2008|ピンチは最大のチャンス。
- 2009|「この車、何?」から始まる年賀状。
- 2010|「想」。カクカクした勇者と、無限の想像力。
- 2011|兎に角、笑えれば。
- 2012|為せば成る。意思あるところに道はある。
- 2013|年男、戦えます!
- 2014|3人で3馬力。
- 2015|羊の皮をかぶった、羊。
- 2016|猿、縁、円。「えん」で遊ぶ申年。
- 2017|好きな車を、水彩で。BLOOKBIRD。
- 2018|ペンは犬より強し。
- 2019|ありがとう、平成。よろしく、新時代。
- 2020|写真には写らない美しさを見つける!
- 2021|想いを守る、ブルック石鹸。
- 2022|寅に翼。忘れていた気持ちを、もう一度。
- 2023|好きな車に、もう一度。NEUE KLASSE。
- 2024|上昇起龍。好きなものを、勢いよく。
- 2025|栖。おもしろい人と、おもしろい事に出会う場所。
- 2026|AI時代の愛。
2007|「勢」。好きな車に、進んでいく力を込めて。

主役はBMW 2002 turbo。車好きの自分らしさと、ターボでぐっと前へ進むような勢いを、一枚に込めました。当時乗っていたのは黒い「マルニ」のtiiですが、この年賀状ではターボの力強さを借りています。
車の前にある鏡文字が、前を走る車のバックミラー越しに正しく読める。その仕掛けが好きで、「Blook planning」の文字にも取り入れました。富士山や和柄でお正月らしくしながら、花札にはゲーム好き、任天堂好きの気持ちも少し。自分の好きなものを通してブルックを知ってもらう、そんな年賀状です。
2008|ピンチは最大のチャンス。

印刷物の仕事が減り、ホームページへと仕事の領域が変わっていく頃でした。法人化したばかりの時期に感じていた変化を、「ピンチは最大のチャンス」というコピーにしています。厳しい状況も、新しいことへ進むきっかけにしたいという思いです。
絵は、好きなゲーム『Grand Theft Auto』のパッケージを題材にしたコマ割り。自分やスタッフ、好きな車を描き込みました。ルノーの車を見て、車好きの方が反応してくれたら面白い。ゲームや車が好きなことに加えて、イラストも描けるという自分たちの一面を伝えたかった一枚です。
2009|「この車、何?」から始まる年賀状。

鳥山明さんがデザインした電気自動車を題材に、自分がその車を運転しているところを描きました。着ているのは中日ドラゴンズの服。好きな漫画家、好きな車、地元の好きなチーム。年賀状なら、こういう自分の好きなものを自由に描いてもいいと思っています。
少しマニアックな車を選んだのも、「これ、何の車ですか?」と聞かれたら話ができるから。絵が会話のきっかけになることも楽しみにしていました。この年は紙と印刷にもこだわって、つやのある仕上がりにしています。画面の画像だけでは伝わりきらない、手に取ったときの質感まで含めた年賀状です。
2010|「想」。カクカクした勇者と、無限の想像力。

ファミコン世代の私にとって、ゲームの中のカクカクした絵は、ちゃんと勇者でした。箱や説明書に描かれた格好いい姿と画面の姿が違っていても、その間は自分の想像力で埋めていたのだと思います。グラフィックがどんどんきれいになるなかで、想像力をかき立てるものをつくりたい。その思いを「想」の一文字に込めました。
青い「Blook」の文字は、自分で粘土を使ってつくったものです。ファミコンのカセット差込口に挿し、昭和らしい雰囲気の場所で撮影しました。ドット絵はIllustratorで制作。年賀状に書いた「無限の想像力で、冒険をデザインしたい」ということばを、粘土と写真とドット絵で形にしています。
2011|兎に角、笑えれば。

迷ったとき、私が大切にしているのは「面白いか、面白くないか」「かっこいいか、かっこ悪いか」ということです。この年は、好きなウルフルズの曲からもらった気持ちを、卯年のウサギに重ねました。
「兎に角」と書くなら、本当にウサギに角を付けてしまおう。そうして描いたのが、このちょっとおかしなウサギです。絵はアナログの手描き。「QUANTUM JUMP」のことばも、ウサギのジャンプに掛けています。見た人が少し笑えて、自分たちらしさも伝わる。ことば遊びを、そのまま絵にした一枚です。
2012|為せば成る。意思あるところに道はある。

キャンピングトレーラーに強く惹かれていた頃の年賀状です。仕事をしながら、いろいろな場所へ行く。デザインの仕事なら、そんな働き方もできるのではないか。好きなエアストリームとメルセデス・ベンツSLを組み合わせ、自分の「夢の生き方」を手描きしました。
実際の牽引を勧める絵ではなく、好きなもの同士を組み合わせた、少し無茶な夢です。その無茶も含めて「為せば成る」。すでにある道に従うだけでなく、意思を持って取り組めば道をつくれる、という気持ちを込めました。「design my life.」にも、自分の生き方を自分で考えていく、そんな思いを重ねています。
2013|年男、戦えます!

巳年の年男だったこの年は、好きなゲーム『メタルギアソリッド』のスネークが題材です。スネークは蛇。自分の干支とゲームの主人公がつながるところから、栄養ドリンクの広告でおなじみの「戦えます」という表現を組み合わせました。
瓶には、私自身を表す「TAKE 1977」。さらに「Snake year」のことばを添えています。年男の気合いを真面目に宣言するだけでなく、ゲーム好きと冗談を一緒に届ける。干支、キャラクター、広告のことばを組み合わせて、自分らしい年始のあいさつにしました。
2014|3人で3馬力。

土井が加わり、竹中・村上・土井の3人になった当時のブルック。3人の力で頑張っていこう、という気持ちを、午年に掛けて「3人で3馬力」と表しました。題材にしたのは、馬が登場する好きなゲーム『レッド・デッド・リデンプション』。馬に乗っているのは自分の似顔絵です。
「はみ出し」ということばを使い始めたのも、この頃だったように思います。一緒にいいものをつくるために、まず自分たちがどんな人間なのかを知ってもらい、好きになってもらいたい。年賀状も、そうした発信のひとつでした。人数と干支を掛けた短いコピーに、そのときのチームの姿が残っています。
2015|羊の皮をかぶった、羊。

車の話で使われる「羊の皮をかぶった狼」を、少しひねって「羊の皮をかぶった羊」にしました。描いたのはロードトレックのキャンピングカー。ベースがダッジ・ラムのバンなので、ラム=羊という名前にも掛けています。羊の車に、さらに羊の毛皮を着せたわけです。
外から見ればおとなしいけれど、中身はすごい。そんな狼の話とは違って、こちらは中身も外身も優しい羊。自分たちのデザインも、そんなふうにありたいという気持ちを込めました。鳥山明さんの絵が好きなこともにじむ、かわいらしい雰囲気にしています。
2016|猿、縁、円。「えん」で遊ぶ申年。

申年なので、画面いっぱいに猿を描きました。題材にしたのは『サルゲッチュ』だったと思います。真ん中にいるのは自分です。
この年の仕掛けは、「猿」「縁」「円」の、同じ「えん」という読み。猿に、縁、五円やお金の円をちりばめています。干支の動物を描くところから、ことばの音をたどって絵の要素を増やしていく。ゲーム好きの遊び心と、日本語の掛けことばを組み合わせた年賀状です。
2017|好きな車を、水彩で。BLOOKBIRD。

好きな車を描きたい、という気持ちが素直に出ている一枚です。ダットサンのブルーバードを題材に、自分で水彩画を描きました。紙の上で色を重ねながら、好きな車の姿を形にしています。
「ブルーバード」と「ブルック」を合わせて「BLOOKBIRD」。酉年だったので、鳥の「バード」にも掛けたのだと思います。好きなものと、自分たちの名前と、その年の干支。そうしたものをつなげて考えるところは、ほかの年にも通じています。
2018|ペンは犬より強し。

「ペンは剣より強し」の「剣」を、戌年の「犬」に置き換えました。絵の題材は『ゼルダの伝説』。当時夢中になっていた『ブレス オブ ザ ワイルド』だったと思います。リンクを自分に置き換え、マスターソードのように見えるものは、よく見ると鉛筆になっています。
デジタルの世界で仕事をしていても、鉛筆やペンのようなアナログの強さは大切にしたい。その思いを込め、イラストもすべて自分で水彩を使って描きました。ことばでは「剣」を「犬」に、絵では「剣」を「鉛筆」に。二つの置き換えを重ねています。
2019|ありがとう、平成。よろしく、新時代。

次の元号は、何になるのだろう。平成最後のお正月に届けた年賀状には、そんな時代の空気が残っています。制作していた頃は、まだ「令和」という名前が発表される前でした。
絵の中では干支たちが集まり、猪が新しい年号を発表しようとしています。でも、ほかの動物がいて、肝心なところが見えない。みんなで次の時代をのぞき込みながら「どうなるんだろう」と想像する。その状況で遊んだ一枚だったと思います。「ありがとう、平成」「よろしく、新時代」のことばを添え、年の変わり目と時代の変わり目を、一緒にあいさつにしました。
2020|写真には写らない美しさを見つける!

子年の題材に選んだのは、ゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』。「ブルック・ザ・ヘッジホッグ」に名前を変えて描きました。とても速く動くものは、写真に捉えにくい。その発想から、写真に表れる姿だけでは捉えきれない美しさを、デザインで見つけて表現したいと考えました。
もうひとつ重ねているのが、THE BLUE HEARTSの『リンダ リンダ』です。歌に登場するネズミと、子年のネズミにもつながりがあります。ゲームのスピード感と、好きな音楽から受け取った思いを、「写真には写らない美しさを見つける!」というコピーにまとめました。
2021|想いを守る、ブルック石鹸。

丑年と牛乳石鹸の牛を掛け合わせ、ブルックの石鹸箱にした年賀状です。コロナ禍で手洗いを意識する日々と、クリーンな「ビューティーデザイン」、そして「想いを守る」という考えを、身近な商品のパッケージの形に重ねました。
牛の模様は、地球をイメージしています。みんなで地球規模の問題に向き合い、いつかマスクを外せるようになったらいい。そんな思いで描いたように記憶しています。小さな石鹸の箱に、そのときの暮らしと、デザインに込めたい気持ちを詰め込みました。
2022|寅に翼。忘れていた気持ちを、もう一度。

前澤さんが宇宙へ挑戦する姿を見て、自分のなかにあった宇宙への憧れを思い出しました。2021年のISSへの旅です。一方、コロナ禍では、当たり前だと思っていた毎日が、当たり前ではないことを思い知らされました。違う出来事ですが、どちらも忘れていた気持ちを呼び起こしてくれた。そこから、この年の文章を考えています。
もともと強いものが、さらに強くなるという「虎に翼」。私はそこに、できないと思っていたことにも挑戦していく気持ちを重ねました。宇宙に浮かぶデザインドリンクの缶と、「寅に翼」のことば。出来事を振り返るだけで終わらせず、思い出した気持ちを力にして、もっと高く飛びたい。そんな年始のメッセージです。
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2023|好きな車に、もう一度。NEUE KLASSE。

2007年にも描いたBMW 2002 turboが、再び年賀状の主役になりました。「やっぱり自分は、ここに戻ってくるのか」と思いながら描いた一枚です。好きな車への回帰とともに、あらためて自分の絵を見てもらいたいという気持ちもありました。
BMWが困難を乗り越えていった歴史も、この車を好きな理由のひとつです。年賀状には「NEUE KLASSE」のことばを添えました。「新しいクラス」を意味するこのことばは、BMW 1500から始まるシリーズの名称です。BMW 700が築いた再出発の基盤を、新しい車づくりへつないだ歴史。そうした背景への思いと、自分にとっての好きな車が重なっています。
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2024|上昇起龍。好きなものを、勢いよく。

辰年のコピーは「上昇起龍」。「上昇気流」の漢字をもじって、龍が起き上がるような、縁起のよさと勢いを込めました。絵に登場するベスパとヤマハSR400は、どちらも自分のバイクです。車だけでなく、好きなバイクも年賀状の題材になっています。
鳥山明さんが好きなので、この年はイラストだけでなく、文字もその雰囲気を意識して描きました。大きな文字の勢いと、乗り物の楽しさを、一枚の中でつなげています。ことばを考え、それをどんな形の文字と絵にするかまで、自分なりの「好き」を通してつくった年賀状です。
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2025|栖。おもしろい人と、おもしろい事に出会う場所。

新しい事務所「栖(スミカ)」ができたことを伝える年賀状です。ここで、こんなことができる。こんな場所として使っていける。制作当時に思い描いていたことを、部屋の絵と周囲のことばに詰め込みました。場所の説明とともに、これから始まることへの期待も届けたかったのです。
家を俯瞰して見せる描き方は、以前『Dr.スランプ』で見て、何度も眺めていた好きな挿絵へのオマージュ。文字や色にも、好きだった漫画や、漫画雑誌の印刷の雰囲気を少し忍ばせています。紙は、少しざらっとした、和紙を思わせる質感のものを選びました。新しい場所の案内を、絵とことばと手触りで届ける年賀状です。
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2026|AI時代の愛。

AIによってデザインの世界が変わっていくなかで、ブルックが大切にしたいものを、あらためて考えました。アナログな手の動きに加えて、人の感情が通った「愛」が必要なのではないか。好きなものをつくり、自分たちを知って好きになってもらい、人と人で一緒につくっていく。その考えを「AI時代の愛」ということばと文章にしています。
午年にちなんだ馬のメカには、経理や営業などで走り回る熊田の姿を重ねました。村上はカメラマンとして飛び回り、私は鉛筆をミサイルのように使う。自分たちの役割を、それぞれの乗り物と道具で表しています。イラストはすべて、自分で水彩を使って描きました。
年賀状じまいということばも聞くなかで、あえて大きな横長の年賀状にして、紙も選びました。手紙を送り、絵を描き、水彩の色を届ける。そうした自分たちのスタイルを貫くことも、この年のメッセージになっています。
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絵とことばで、伝わるきっかけをつくる。
20年分を並べると、好きなものは何度も登場しています。その一方で、仕事の変化や世の中の出来事、そのとき一緒につくっていた人たちによって、伝えたいことは少しずつ変わってきました。
何を伝えるかを考え、ことばを選び、絵や形にする。そして、受け取る人のことを考えて紙や印刷を選ぶ。年賀状でも、お客様の仕事でも、そうして考えてつくることを大切にしています。
年賀状やDMなどの紙媒体で、自分たちらしさを伝えたい。伝えたいことはあるけれど、どう表せばいいか迷っている。そんなときは、企画やことばを考えるところからご相談ください。
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イラストとコピーを企画から組み立てた制作例として、ミライのおしごと図鑑@みずほもご覧いただけます。
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